平成09年06月12日 参議院 商工委員会

[064]
日本共産党 山下芳生
昨年の質問後、現地の協議会に指導したと、ところがその後も残念ながら事例が生じているというお答えだったと思うんですが、私も手元に昨年の質問以降、兵庫県相生地区で提出された申告書の写しを持っております。おっしゃるとおり、事態は全く改善されておりません。

昨年の2月22日からことしの2月19日までの1年間に公取に告発した件数というのは17回で72件です。内容も悪質化をしておりまして、洗剤も1個上げるというようなものじゃないんですね、そんなかわいいものじゃない。6個とか12個とか20個、これは1万円相当ですよ。それから、ビール1箱、24本、8400円相当あるいは商品券、1万2000円相当などが景品として渡されている。それから、その手法も非常に悪質巧妙化をしておりまして、例えば無代紙を1カ月分まず配達した後で、その後、契約を取りつけて、その契約の期間によって景品を宅急便で送ると。証拠をなくすためにそういうやり方をやる。その上、他社からそういう件に関しての問い合わせがあった場合は言わないようにと口どめをするというふうなことまでやっておるわけであります。

私がいただいた17回72件のうち、公正取引委員会が法的な措置をとったものはゼロ、皆無ですね。協議会の措置としてとられたのが14回64件。残り3回分8件については何の措置もとられておりません。公正取引委員会は業界の公正取引協議会による自主的な努力に期待をこれまでもされてきたわけですが、結局この問題は30年間ずっと続いておりまして、一貫して改善されたためしがないんですね。そのことは今あなたもお認めになった。

ですから、これは業界の自主性に期待するだけでは違反事件はなくならないということだと思うんです。もうはっきりしている、事実によって。こういう事態はもう放置できないと思うんですね。

公正な取引ルールを守らせなければならない公正取引委員会が、直接法律を守らせるように独占禁止法に基づいた法的措置、排除命令等ですね、これをもうやはりとらざるを得ないんじゃないかと私は思うんですが、いかがですか。

[065]
政府委員(公正取引委員会経済取引局取引部長) 山田昭雄
御指摘のとおり、若干数字は違いますが、かなりの違反、景品提供の事実があり、ただ、それに対しましては公正取引協議会というところで自主的な措置もとっているということも事実でございます。新聞の景品つき販売につきましては、私どもとして、基本的にはやはり自主規制の運用に任せ、そしてそれを徹底的にやっていただくということが必要であると考えておるわけでございます。

それと、他方、今の新聞業における景品の制限というのは、一切の景品は出してはいけないという、こういう規定になっておりまして、ほかの商品について考えてみますと、昨年4月以降、経済社会の変化から景品規制につきましては一般的には告示の見直しというのを行ってきておりまして、それに即した形で公正競争規約という業界の自主ルールも改めるようになってきているわけでございます。告示がありました公正競争規約のうち、既に24の規約につきましてはそのような見直しを行ってきております。新聞業界に対しましても、公正競争規約の見直しにつきましての検討を求めているところでございます。

また、その見直しに当たっても、一般規定の改正の趣旨に即して、原則禁止、一切だめだということではなくして、現在の経済情勢、社会情勢に合わせ、また消費者にとってもいろいろ選択の多様性を与えるということが必要じゃないかというようにも考えておるわけでございます。今、この業界におきましてルールの見直しを行っておりますが、ルールの設定にあわせまして、仮にルールを定めたらそれを守るようなこと、そういった手続とか体制とか、そういうのもきちっとつくってもらわなければいけないという、こういうこともあわせてお願いしているところでございます。

今いろいろと御指摘がございました点につきましては、業界の自主規制であります公正競争規約が適正に運営されるように指導するとともに、全国的な実情もよく把握いたしまして、自主規制が機能しないなど、必要な場合には公正取引委員会としての対応も検討したい、このように考えておるわけでございます。

[066]
日本共産党 山下芳生
自主規制がもう機能していないということを事実が証明しているんですよ。にもかかわらず、いつまでも公正取引協議会の自主的な取り組みに任せるということを繰り返して、市場の番人としての役割を果たしていけるのかと、公正取引委員会として、という私は問題提起をしているんです。

しかも、新聞というのは再販制度が維持されている分野ですよ。ここに不当な景品、不当と言っていいかどうか、景品がセットされるようなことを認めるということは、私は再販制度と相矛盾することにもなると思うんです。ですから、そういう点もよく吟味していただいて、いつまでも自主的な取り組みにゆだねるということでは、これは逆に公取の姿勢が問われてくるというふうに言わざるを得ないと思うんです。

最後に、委員長にぜひ伺いたいのですが、公正取引委員会が仮に指導するにしても、私は個々の販売店だけを対象にしていたんではだめだと思うんですね。不正常な拡販をやらせているのは発行本社です。景品やそれから拡張員にかかる費用の半分は本社が持っている。ですから、ここに厳しく対処しなければ改善はできません。

公正取引委員会として、新聞業界に対して何か弱みを握られているんじゃないのかというような疑念を晴らすためにも、厳正なこれは法的対処をすべきではないかと思いますが、委員長の見解を伺って終わります。

[067]
政府委員(公正取引委員会委員長) 根來泰周
私も個人的にそういう事実はよく承知しておりますけれども、一つ建前論を申し上げれば、やはり一般商品と新聞、雑誌等と商品が違うということをしきりに先ほどの再販問題の場合でも言われているわけでございます。私どももその議論の半分ぐらいは了承できるわけでございまして、そういうことからいうと、第4の権力といいますか、そういうマスコミの世界におきまして、やはりその自主規制というのが優先するんであろうと。そこへ役所の者がのこのこと乗り込んでいかなくても新聞界で十分規制できるものだろうと、そういう期待のもとに今まで推移してきたわけでございます。

私どものそういう態度が悪いかどうかということは、これからもう少し考えなければいけませんけれども、基本的にはそういう考え方でございますので、おっしゃることをよく踏まえましてこれからどうするかということをよく考えたい、こういうふうに思っております。