昭和55年11月11日 参議院 商工委員会

[149]
日本共産党 市川正一
私は、最近暴力事件まで引き起こし、あるいは裁判ざたにもなるなど、大きな社会問題になっておりますいわゆる新聞の拡販問題について質問いたします。

社会常識を超えて異常とまでさえ言えるさまざまな新聞の拡販競争の結果、景品表示法に違反する無代紙の横行、これによって一般販売店の経営が非常に圧迫されているという問題が、去る3月衆議院の予算委員会の分科会でわが党の瀬崎議員もこれを取り上げました。私はそれを踏まえつつさらに新たな幾つかの問題について取り上げたいと思うのであります。

まず、公正取引委員会に伺います。公取委員会はことしの6月23日付で販売店主に対して新聞の取引実態調査を行い、調査票はすでに回収され、現在集計中だと聞いておりますけれども、この調査の目的について簡単にお聞かせ願いたい。

[150]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
公正取引委員会が現在行っております新聞販売店を対象といたしました調査は、日刊新聞の取引につきまして押し紙、拡材、無代紙といったものの提供行為等が、全国的にどういうような実態になっているかということを把握いたしまして、これらの不公正取引の是正措置を検討するための基礎資料を収集することを目的として実施しているものでございます。

[151]
日本共産党 市川正一
それについて後でさらにお伺いしますけれども、これまで公取は新聞業界に対しては昭和49年の景品表示法違反での排除命令あるいはやはり拡材問題での厳重警告、こういうふうにたびたび行ってきた経過があります。ところが一向に改善されておりません。

今回の全国的な調査でも調査票によりますと、「不公正取引の是正措置を検討する基礎資料とするため」と、いまおっしゃいましたが、その目的が明記されております。したがって、この調査によって依然として景品表示法違反あるいは独禁法違反に該当する実態がもし明らかになるとするならば、当然厳重警告あるいは追加調査などによって違法行為の排除措置をとることになると私は思うのでありますが、公取の見解を重ねて伺います。

[152]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
ただいま調査をいたしておりますのは、新聞販売店を対象としておりますが、これにつきまして独禁法上または景品表示法上の措置をとりますためには、新聞販売店だけのアンケート調査でございますが、それだけでは不十分かと思いますので、場合によりましては必要に応じまして新聞発行本社からの報告を求めるとか、それからヒアリング調査と申しますか、面接の上での調査を行うというようなことで詳細に正確な実態を把握いたしまして、さらには関係者の意見等も十分聴取いたした上で、必要な改善指導措置をとってまいりたいというふうに考えております。

[153]
日本共産党 市川正一
いま公取もおっしゃったように、今度の実態調査は私は3つのポイントがあると思う。1つは押し紙、2つは拡材問題、3つは発行本社と販売店の契約問題、これがいずれも新聞販売の正常化を図る上で非常に重要なポイントだと思う。

そこでまず、押し紙の問題から伺いたいのでありますが、押し紙が独禁法2条9項の「不公正な取引方法」に当たることは、同条項に基づいて公取委員会が昭和39年の10月9日告示された「新聞業における特定の不公正な取引方法」において「新聞の発行を業とする者が、新聞の販売を業とする者に対し、その注文部数をこえて、新聞を供給すること。」というふうに明記していることからも明らかであります。

さらに、昭和39年6月5日付の公取事務局長から新聞協会新聞公正取引協議委員会委員長あての注文部数についての解釈通達では、これも御承知だと思いますけれども、

「注文部数」とは、新聞販売業者が新聞社に注文する部数であって新聞講読部数(有代)に地区新聞公正取引協議会で定めた予備紙有代)を加えたものをいう。

新聞社は、新聞販売業者に対し、その「注文部数」を越えて新聞を供給してはならない。

新聞販売業者は、新聞社に対し、「注文部数」を越えて注文しないものとする。

といたしております。つまり、若干の予備紙等を除いては発行本社は有代での新聞購買者数以上に供給してはならない。販売店も注文してはならないということになっております。したがって、これが守られるならば押し紙の問題なんというのは本来あり得ないことであります。ところが、この公取文書にある予備紙等というのは、これは一体どの程度というふうにまずお考えなのか、重ねて伺いたい。

[154]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
予備紙等につきましては、地区の新聞公正取引協議会におきまして具体的に決めております。

地区によって若干異なるわけでございますが、たとえば東京地区の新聞公正取引協議会で決めておりますところでは、予備紙等という中に3種類ばかりございますが、予約紙というのは月末の2日間限りとか、おどり紙というのは月初めの3日間、予備紙というのは原則的には100部について2部といったような決まりがございます。

[155]
日本共産党 市川正一
100部に2部ということは2%ということになりますね。2%という数字がいま出されましたけれども、しかし本来言うところの予備紙というのは実際もっと少なくて済むわけです。

たとえば、私ここにある有力地方紙の販売店の資料を持っておりますけれども、この販売店の実配数が約6800部に対して、予備紙等の欄を見ると20部ぐらいから30部ぐらいです。つまり0.4%程度であります。実際にはこの程度で十分に、たとえば輸送時のあるいは雨天による破損などのヤレ、あるいはまた配達間違いによる補償等々、これで賄えるわけです。ところが、実態は問答無用で大量の押し紙が横行しております。

今回の公取全国調査でも、調査票はすでに回収されておるわけでありますが、その傾向を公取は十分つかんでおると思いますが、この押し紙についてどういう趨勢にあるのか、現在の掌握された状況を伺いたいんであります。

[156]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
押し紙の実態につきましては、現在調査中の段階でございますので確たることを申し上げられないのでございますけれども、先生御指摘になりました特殊指定が十分遵守されているとは言いがたい状況にあるというふうに思います。

[157]
日本共産党 市川正一
非常にわかりにくいというか間接的表現だけれども、要するに守られていないと。この調査票は7月に回収されたわけでしょう。もういまは11月です。ですからまさに7、8、9、10と4カ月たってまだまとまっていないというのでは、率直に言ってこれは怠慢としか私、言いようないと思うんです。そういう状況だからなかなか改善が進まないということも、私あえて率直に指摘しなければならぬ。

しかし、問題を前へ進めますと、たとえば日本新聞販売協会、俗に日販協と申しますが、この日販協が去る52年にも独自の調査を行ったところ、平均して約8.3%、トータルで290万部の押し紙があったということを公表いたしております。こういうことが公表されているんだけれども、公取はまだ何も手を打っておられない。しかも、私の調査ではこの時点よりも押し紙はさらにいわばひどくなってきている、そういう傾向を生んでおります。

私ここに1つのデータを持ってまいりましたけれども、これは新聞社の名前を言うといろいろその販売店にも迷惑がかかりますから私あえて申しませんけれども、ある全国有力紙、その大阪における事例であります。この文書はことし10月に各販売店にあてられたものですが、「本紙奨励金制度更改及び新設について」と題する文書で、この販売店の場合は10月の実配数は、実の配数は約1000部です。ところがこの文書によりますと、「貴店計画数」という欄がございますけれども、11月、12月合わせてこれを1000部を約1200にしろと、来年の1月、2月は約1300にしろ、3月、4月は約1400にしろというふうに明記されている。この「貴店計画数」というのは実は計画でも何でもないんです。これだけのものが販売店に有無を言わさず送られてくる、そういう数字であります。

そうしますと、約300部、購入部数、実配達部数の2割以上の押し紙になるわけであります。これが全国的な押し紙の実態であります。

もう1つ、私ここに具体的な書類を持ってまいりましたけれども、これであります。これはある有力な地方紙であります。これは公取の今度の調査の対象にもなっているところであります。ここには、「定価改定による特別拡張依頼の件」と題する発行本社の文書がございますが、やり方は先ほどの有力全国紙とほぼ同じであります。ここでも6700部の実配数に対して200数十部の押し紙をはっきり明記しています。それだけではなしに、この新聞社の場合には本社の担当員が販売店に対して、これは押し紙であると明言しておる。その名前もその日付もはっきりしております。こういった押し紙が新聞業における特定の不公正な取引方法に違反するというふうに私は明白に思うんでありますが、公取委員会としての見解を伺いたいんであります。

[158]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
新聞の特殊指定の2項に実は、「新聞の発行を業とする者が、新聞の販売を業とする者に対し、その注文部数をこえて新聞を供給すること。」ということを不公正な取引方法として指定しておるわけでございまして、これは先生御指摘のとおりでございます。

ただいま御指摘のような事実がありますといたしますれば、この指定事項に該当し、独禁法第19条の規定に違反する疑いがあるのではないかというふうに考えられます。

[159]
日本共産党 市川正一
だとすると、いまおっしゃったようにこれは結論として排除措置をとるということにいわばつながると、こう理解してよろしゅうございますか。

[160]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
個別の事案といたしまして、法律に基づきます手続に従いまして処理をいたすことになろうかと思います。

[161]
日本共産党 市川正一
そうすると、その個別的ケース、私一つ一つは申しませんけれども、いまおっしゃったようなことになると排除措置ということにも法的には相なるわけでありますね。

[162]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
具体的な実態を十分こちらでお聞かせいただいた上で判断すべき問題であろうかと思います。

[163]
日本共産党 市川正一
その判断の1つとして排除措置も含まれるということですね。

[164]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
独占禁止法に基づきます措置がとられるということでございます、必要に応じまして。

[165]
日本共産党 市川正一
わかりました。したがって、当然その独禁法の措置の中に入っているということですね。

私、次の問題をこれと関連してお伺いしたいんでありますが、こういう押し紙方式ということによってどういう事態が起こっているかという問題であります。

それは第1に、前回瀬崎議員も指摘いたしましたように、明白に景品表示法に違反する行き過ぎた拡販競争をもたらしております。景品、いわゆる拡材を使った拡販競争については、これはすでに昭和48年に公取が九州地区での拡材を使用した拡販競争に対して朝日、毎日、読売、西日本、こういう各発行本社に景品表示法違反で排除命令を出したり、あるいはその後昭和51年には各発行本社に対して厳重警告もされております。ところが、その後も一層これがエスカレートする方向に進んでいる。たとえば排除命令を出したこともある九州地区を見ますと、ここに新聞労連が調査した資料がございますが、一々その全国紙の名前は言いません。しかし、たとえばディジタル時計だとか、あるいはまた電気毛布、絵皿時計あるいはこたつかは、トランジスタラジオ、こういうものと加えて無代紙と、すさまじくやっぱり横行しているわけです。念のために伺いますけれども、まずこういうような行為というのは景品表示法に違反すると思うんですが、いかがでしょうか。

[166]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
新聞業界の景品の問題につきましては、「新聞業における景品類の提供に関する事項の制限」という景表法3条に基づきます告示が出てございます。それに従いまして景品が制限されるわけでございますが、その中身といたしましては、かなり制限的に規定されておりまして、災害の見舞いとか新聞類似の付録とか、そういったようなものだけに景品は限定されるように規定されております。

[167]
日本共産党 市川正一
いま私が申しましたたとえばディジタル電気時計とか、あるいは電気毛布だとか、そういうものはどうですか。

[168]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
この告示に規定いたします景品には該当しない。つまり告示違反になると思います。

[169]
日本共産党 市川正一
告示違反になる、わかりました。

そこで、私続けて伺いますが、発行本社によって構成されている日本新聞協会は、52年の7月1日に共同宣言を発表しております。その共同宣言の中に、独禁法特殊指定を厳守励行する。また景品表示法違反の不公正な販売方法を根絶する。こういうふうに内外に宣言いたしております。

ところが実態を見ますと、全くこれは世間を欺くものという結果になっておるんです。なぜなら、こういう行き過ぎた拡販競争というのは、直接的には販売店やあるいは拡張団と言われるものがやっているのでありますが、そうせざるを得ないようにしているのは実は発行本社による押し紙であります。また、片務契約と言われておる販売店に対する不当な経営支配あるいは拡張活動の押しつけであるからであります。

たとえば20%を超すような押し紙が来ますと、これも有代でありますから、有料ですから、ですから無代紙として使うだけではなしに拡材をつけてどうしても拡販に走らざるを得ぬのであります。また現にそうさしているのであります。

しかも、その拡材はと言うと、私ここに持ってきましたけれども、これはある有力全国紙の場合でありますけれども、その本社内に特別の拡材専門の会社までつくる。そこから拡材のカタログをこのように葉書つきで各販売店に送るんです。そして販売店の成績いかんによってこの拡材費は100%販売店持ち、場合によっては五分五分にしてやるというような、各販売店をこういう形でコントロールする、そういう支配が現に行われております。

そして、私ここに各発行本社ごとの、大臣も見てください。拡材の現物を持ってきました。これはある全国有力紙のいわゆるこういう形での拡材であります。これはヘルスメーターと言うんですね。それから先ほど来私言っておりますこれが電気時計です。これがこういう食器であります。そのほかビールとかあるいはしょうゆ、こういうもののギフト券なんですね。使われておる。

また、これは別の全国紙の拡材です。これは「味の素」とサラダオイルのセットですね。これはシーツ。これはシャンプー。こういうものが続々使われておる。こういう形でいわば拡販競争に追いやられている。

公取に伺いますが、これが発行本社による景品表示法違反行為であるということは明らかであると思いますが、いかがですか。

[170]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
「日刊新聞の発行又は販売を業とする者は、新聞を購読するものに対し、景品類を提供してはならない。ただし、次の各号に掲げるものは、この限りでない。」ということで、災害見舞いとか新聞類似の付録等が決められているわけでございまして、ただいまお示しされましたような物品が新聞の購読の勧誘のために提供されているということでありますると、この告示に違反するおそれがあるというふうに思います。

[171]
日本共産党 市川正一
おそれがあるというんじゃなしに、違反しているということじゃないんですか。こんなあんた、新聞販売とこのディジタル時計とどんな関係おまんのや。おそれがあるんじゃなく、違反しているんじゃないですか。

[172]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
それらの物品が新聞の講読の勧誘のために提供されたということになりますと、具体的に調査をいたしてみませんとわかりませんけれども、非常に濃厚に告示に違反するということになろうかと思います。

[173]
日本共産党 市川正一
濃厚って、あんた、パーフェクトにいっとるがな。

田中大臣、こういう実態なんですが、こういう姿というのは好ましい正常な姿というふうに通産大臣お考えでしょうか。

[174]
通商産業大臣 田中六助
余り正常な姿とは思いません。

[175]
日本共産党 市川正一
正常でないばかりか非常にこれはやはり異常な姿であります。

そこで私引き続いて議論を進めますが、もっと社会的にも異常なといいますか、容認されないようなことが現に行われております。これは別のまた全国紙のケースでありますが、拡材の中にこういう文書が入っているんです。たとえばこういうものの中へ、これがそのコピーでありますけれども、「御苦労さまです。〇〇新聞は〇月〇日で休ましてください。以後配達されても代金はお支払いいたしません。」というのが、こう入っているんです。言いかえれば、自分の競争相手の新聞、これを断らせる文書もこの中に入れて配っている。こういうものは独禁法に違反するのではないでしょうか。

[176]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
不公正な取引方法の中に12ございますけれども、いまお示しの行為そのものがストレートに該当する行為というのはちょっと見当たらないかとも思います。

[177]
日本共産党 市川正一
独禁法の19条に該当するんじゃないですか。

[178]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
19条の不公正な取引方法につきまして、独禁法の2条9項で規定がございます。その2条9項を受けまして公取の告示が出ておりまして、その告示で不公正な取引方法というのを1から12まで規定しております。ただいま先生が御指摘になりました、何といいますか、チラシといいますか、中に入っている紙だけではこの不公正な取引方法に該当する、ストレートに該当するところがないのではないかというふうに申し上げたわけでございます。

[179]
日本共産党 市川正一
これ明白に19条に違反するというふうに私ども考えます。

時間がないので進めます、きょうは持ち越しますけれども。

さらにこういうことも私、拡販の資料として示したいんでありますが、これはある全国紙の拡販団である小堀セールス企業、これは最近週刊誌でも盛んに問題になっておりますけれども、そこの、グループが販売店に引き継いだ引き継ぎ書の現物であります。この中に明白に「有材」と、こうなっている。拡材によってこれはふやしたいわば読者であるということを明記して、そして引き継いでいる。こういうふうなことがいわば横行しておるんであります。

そこで公取に伺いますが、共同宣言やあるいはその他の態度表明があるにもかかわらずこういう押し紙、拡材による拡販競争がかえって横行しているというのは、なぜそうなるのかという点についてどう見ておられるのか、その点をお伺いしたいんであります。

[180]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
公正取引委員会といたしましても、再三にわたりまして排除命令とか警告等の措置を講じまして、それからこれに対応いたしまして業界におきましては販売正常化に関します共同宣言等の措置も講じておるわけでございますが、それにもかかわらず、御指摘のように、販売正常化が実現していないのではないか、販売正常化が実現していないとすれば、どこに具体的な問題があるのか、これがまさに実は私ども公正取引委員会が今回の調査を開始するに至った問題意識でございます。したがいまして、どこに問題があるかという点は調査の過程で十分解明すべき事項と心得ておりまして、調査の進展に応じましてそれらの問題を解明してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。

[181]
日本共産党 市川正一
私はそういう立場から先ほど来いろいろの材料を出して、あなた方がやはり早く手を打たなければならないということで問題をここで追及しているわけでありますが、その一助として若干また角度を変えて問題を伺いたいのでありますが、こういう押し紙拡材による過当な拡販競争というものが販売店の経営者、そしてその家族、さらには販売店に働く労働者に非常に大きな犠牲を強いているということであります。

公正取引委員会に伺いますが、押し紙がどの程度販売店の経営を圧迫しているか御存じですか。

[182]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
押し紙の影響といいますか、販売店に対する影響につきましても調査の中身といたしまして調べておりますので、その分析を待ちたいというふうに考えております。

[183]
日本共産党 市川正一
私その実情の一端をここで明らかにしたいのでありますが、たとえば押し紙によって結局販売店は自腹を事実上切らされるわけでありますから、販売店の実質マージンは、たとえば20%の押し紙があると押し紙のない場合の約40%しかならない。いわば半分以下にマージンが減ってしまうんです。そこへ持ってきて拡材の費用でしょう、これですよ、こういうものを押しつけで買わされるわけですよ、押し紙と一緒に。そして無代紙の費用でしょう、これもいわば自分で立てかえなければならない。こうなってきますと、この販売店の経営というのはもう非常な負担であり、危機であります。だからこそ、販売店の転廃業は1年間で大体5%から10%という高さで転廃業せざるを得ない。

そしてこういった販売店の立場、これを決定的に弱いものにしているのが片務契約と言われる発行本社、たとえば有力全国紙ですよ、これと販売店の契約であります。たとえば私はここに契約書のコピーを持ってきました。いずれも全国紙であります。この契約書によりますと、ある全国新聞の場合は発行本社が目標部数を設定して、販売店がそれを達成できない場合にはいつでも契約が解除できることになっております。また別の全国新聞の場合は、私一々その条項を読みませんけれども、減紙などがあった場合には、発行本社は地域の変更とか販売店の新設、契約の解除ができるということになっているんです。まさに一方的、片務的です。

公取もこの種の契約書はすでに入手されておると私思うんでありますが、こうした条項はいわゆる優越的地位の乱用に当たるのじゃないですか。

[184]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
私ども調査の一環といたしまして、新聞販売店が新聞発行本社と締結いたしております契約につきましても調査しております。先生御指摘のような条項がある場合もあるかと思いますけれども、私どもの基本的な考え方といたしましては、その契約書自体だけで優越的地位の乱用という不公正な取引方法に該当するというのはむずかしいのではないかと。契約書の条項と、それからそのほかの不公正な取引方法に該当する、たとえば押し紙とかそういったようなものとの組み合わせがあった場合に、これは独禁法上の問題として処理の対象になるのではないかというふうに考えております。



[191]
日本共産党 市川正一
とにかく労働省御存じだと思うけれども、毎朝午前2時半ごろに起きて、3時までに販売店に出勤して、チラシをセットして、そうして3時半から4時には、もうバイクや自転車に積み込んで配達する。7時ごろにそれを終えて朝食、朝飯を食うて仮眠する。再び拡張や集金に回って、午後3時からもう夕刊作業を開始、夜はナイター集金と拡張で8時ごろまで走り回っている、こういう連続であります。

こういうふうに睡眠時間も十分とれず、また低賃金で、社会保障制度もきわめて不十分、こういう販売店の労働者の実態は、やはり早急に改善の必要が私はあると思う。そのためにも押し紙、過当競争による販売店の経営困難を改善することが不可欠であるということを、私この際、政府にもまた公取にも認識を新たにしていただきたい。

言いかえれば、こういう拡販競争による労働強化を改善する大もとはそこにあるというふうに思うのであります。ところが、ある発行本社は、販売店労働者が労働組合をつくると、販売店に圧力をかけ、その販売店の契約を改廃するというふうな形で、それをつぶそうとするケースまで出てきております。その具体的事例を私は幾つも承知いたしておりますが、したがって労働省としては、販売店主に物を言うだけではなしに――それではまことに片手落ちなんです。発行本社自身も値上げのときには、たとえば私はここにそのコピーを持ってきておりますけれども、こう言っておるのです。所長並びに従業員の皆様の生活と販売店経営を正常な姿に戻すための料金改定と言うておるのです。また、これまでの質疑の中でも明らかにいたしましたように、こういう発行本社に対して、労働条件改善のために努力するような、必要な指導や勧告を労働省としてなさることが根本的解決のいわば道を開くと、こう思うのでありますが、いかがでしょう。

[192]
説明員(労働省労働基準局監督課長) 岡部晃三
新聞販売店で働かれる労働者の労働条件の問題につきましては、基本的にはこれを使用する各新聞販売店の責任であろうかと存ずるのでございますが、しかし、新聞販売店の業務と申しますものは、その性格からいいまして、一定の休刊日を除く連日の宅配業務ということでございまして、特殊な社会的要請にこたえるものでなければならないわけでございます。また、規模は小さいということから、これら労働条件の改善につきましては、新聞を発行する新聞社の側の協力、指導というところに負うところも多いというふうに考えるところでございます。

このため労働省におきましては、従来から各新聞社に対しまして、あるいはまた、それで構成いたしておりますところの日本新聞協会に対しまして、労働条件確保上の問題点につきましていろいろと働きかけを行ってきているところであります。また、この新聞協会におきましては、その活動の一環といたしまして、販売委員会あるいはその中の販売労務専門部会でございますか、そのようなところでいろいろと自主的な活動も高められておられるところでございますが、なお労働省におきましては、一層日本新聞協会等と連携を深めまして、労働条件の維持、改善に遺憾なきを期するようにやってまいりたいと思っております。

[191]
日本共産党 市川正一
大元にメスを入れていただきたい、希望します。