昭和60年03月26日 衆議院 物価問題等に関する特別委員会

[175]
公明党 草川昭三
全国の新聞の販売店の店数が約2万3000軒、従業員の方々が43万7000人、大変な事業所であり産業でもあるわけでございますけれども、こういう方々の労働条件というのは極めて劣悪であり、これは最後にお伺いをしますけれども、労働省あたりも、基準法上非常に問題があると常々指摘をしておるわけであります。

そこで、一体親会社の方の新聞というのはどの程度現在発行されているのか。朝日、毎日、読売、全国紙があるわけでございますし、その他ローカル紙、さまざまなものがございます。日本ABC協会というのが社団法人であるわけでございますが、月別のレポートというのが出ております。概略で結構でございますから、朝日、サンケイ、日経、毎日、読売、こういう中央紙の朝刊だけで結構でございます、販売部数を、ラウンドナンバーで結構でございますから、答弁を願いたいと思います。

[176]
説明員(通商産業省産業政策局サービス産業官) 菅野利徳
主要新聞の発行部数でございますが、ABC協会のレポートによりますことしの2月の数字でございます。読売新聞が朝刊で890万部、朝日新聞が750万部、毎日新聞が419万部、日経新聞210万部、サンケイ新聞199万部、こういう結果になっております。

[177]
公明党 草川昭三
こういう数字もなかなか一般には発表されないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、このような新聞を2万3000軒の方々が配達をしていただいておるわけでございますが、販売店の経営が悪くなりまして、倒産、夜逃げあるいは店を買い取ってもらうというような例はたくさんあるわけでございます。

この前私、東京都内の転廃業の方々の数が予想外に多いという数字を示しましたが、実はこの数字というのは、例えば公正取引委員会も通産省も、もちろん経済企画庁も、中小企業の現状ということでつかんでおみえになりません。

この倒産件数なりそれから転廃業、いわゆる店がかわる、私はこのことの数字だけはきちんと一遍把握をしてもらいたい、どこの省でも結構ですから。私どもがお伺いをいたしますと、5年の間に3分の1の店主がかわるというわけです。これは、平均をするとほぼこういうわけですね。それだけ実は販売店の現状というのは苦しいわけでございますが、ひとつどうでしょう、通産省本気で、ABCの統計をとっておみえになるわけでございますから、店の転廃業、どういう理由で店主がかわっていくのかということを今後調べる、あるいは販売店の組合を通じてもその資料をとって公開をすることが大切だと思うわけですが、どのような考えか、お伺いをしたいと思います。

[178]
説明員(通商産業省産業政策局サービス産業官) 菅野利徳
新聞販売店の倒産、廃業等の状況を統計として把握する可能性いかんということであろうかと思いますけれども、個別の業種について統計的に詳細な把握をするというのは、いろいろな意味でなかなか難しい問題があります。御指摘の点は一応念頭に置きまして、今後いろいろ難しい問題があるということをお含みおきの上で検討させていただければと思います。

[179]
公明党 草川昭三
どうあろうと、ひとつその数字をつかむことが非常に重要だと思いますし、この問題はそう簡単に結論がつきませんので、時間が多少かかっても結構です、業界の組合を通じてでもいいですから、転廃業の実態が公表されるよう資料を求めたい、私はこう思います。



[189]
公明党 草川昭三
それで、普通の企業が物を売るとか、先ほどおっしゃいましたように企業努力をするという場合には、本社が特別に懐にお金を持っていて、販売促進のためにPRをするとか、あるいは側面的な応援をする、これで営業活動というのは成っていくわけです。ところが、それはトータルとしてはその会社の売り上げ原価には入ってくることになりますから散らばるのでございますけれども、新聞のように明確に定価の中で、店の取り分、基本手数料は890円ありますよ。そのほかに、取った取られたの奨励金なり、あるいはまた今から申し上げますけれども、残紙という問題があるわけです。いわゆる押し紙という問題があります。その残紙、押し紙に対する補助料というのがこの中のどこかにたくさん入り込んでいるわけですね。今私が申し上げましたように、本社の手取りが580円よりない。ということになると、あれだけの大きな新聞社がどうやって経営をしておるか、用紙代にもならぬわけですから。当然のことながらそれは広告料の収入に依拠する以外にはないわけですね。

そこで一体、新聞にかかわる広告費というのはどの程度のウエートなのか。これは前回私は45%から50%を超すということを申し上げたわけでございますが、ひとつトータルの意味で、これは通産省の方に、一体新聞にかかわるところの広告費というものはどの程度のものかお伺いをしたい、こう思います。

[190]
説明員(通商産業省産業政策局サービス産業官) 菅野利徳
広告費の額でございますけれども、これにつきましても公的なデータというのはございません。ただ、電通が「日本の広告費」という本を出しておりまして、その中で媒体別にどれだけの広告費が使われているかというような統計がございますので、そこから引用をして答弁させていただきたいと思います。

一応そのデータに基づきますと、新聞媒体を通じての広告費でございますが、昭和58年で8369億円、総広告費の約3割を占めるという形になっております。

[191]
公明党 草川昭三
だから、新聞社は結局この広告費で赤字を救っておるというのですか、利益を上げておる、こういうことになるわけですね。これは当然そういうことになると思うのです。そこで、そのパーセントは、総売り上げはそれぞれ各社によって違いますので、正確にはかるわけにはまいりませんけれども、45とか50とか55という、半分は広告収入に依拠せざるを得ないということになるわけでございます。

そこで、では今度はスポンサーがいるわけです。新聞に広告を出す以上は、当然のことながらその新聞がよく読まれているかいないかによって広告料金が違うわけです。これは当たり前な話でありますね。そこで、先ほど一番最初に御質問申し上げましたABCレポートというのが社団法人によって出されまして、ここでABCレポートというのは、各新聞社がそれぞれの販売経路を通じて販売した販売部数というもの、いわゆる発行部数ではない、売った部数がここにカウントされますよというので、朝日は今月は753万売りましたといってよく読まれておりますからひとつスポンサーよ、こういうことになりますね。読売は今月890万売りましたよ、こういうことになります。こういうことで、それぞれスポンサーと新聞社との間で広告料金というのが決まることになりますから、このABC協会の、少なくとも販売経路を通じた販売部数というものは、業界にとっても大変大きな影響力を与えることになります。

そこで、これも販売正常化でかねがね言われておるわけでございますけれども、各社そろって売った部数というのを上げようとするわけです。一生懸命売るわけです。だから、例えば創立50周年だ、あるいは100年だというような記念で1年間特別に増紙のキャンペーンを張るとか、あるいは何とかの大きなお祭りがあるから、あるいは市制何とかだ、県の何とかだということで、本社が販売店に非常にプレッシャーをかけてくることになります。当然のことながら販売店は一生懸命売るのですけれども、現地では、売った買った、取った取られた、あるいは拡販団がやってきて、ごそっとどちらかに抜かれてしまったというような、切った張ったの戦争が現地ではあるわけですね。そこで、どうしても売れない、戻さなければいかぬ。ところが、戻すと、売れませんということになりますと、本社の方は困るわけですね、少なくともプラスアルファでどんどん増紙のキャンペーンをやりたいわけですから。

そこで、押し紙だとか残紙だとかという言葉で言われておりますけれども、結局新聞の売れないのを抱え込んでしまうわけですね。これが相変わらず押し紙、積み紙、いろいろな言い方をされておりますけれども、販売店の非常な悩みになっておりまして、私どもがこの国会で取り上げましてから、販売の正常化のために管理センターというのをつくって、それでふやす場合、増紙、減らす場合、減紙の場合は第三者のセンターを通じて親元の発行本社に新聞の部数を注文しようじゃないか、そうすれば親元からの圧力が加わらないからいいというような意見から管理センターというようなものもできたわけでございますけれども、これがなかなかうまく稼働をいたしておりません。そこで公取に、この残紙あるいは押し紙というものについてどのような指導をしておみえになるのか、ひとつお伺いしたい、こう思います。

[192]
政府委員(公正取引委員会取引部長) 利部脩二
まず押し紙、積み紙でございますが、これは独占禁止法に基づく新聞業の特定の不公正な取引方法というものがございまして、その中で新聞販売店が注文した部数を超えて新聞社が販売店に新聞を送りつける、それでその代金を徴収するという行為は違法行為だというふうに規定しております。これは主として、新聞社に対して弱い地位にある販売店を保護する観点から定められた規定でございます。そういうことから、今のような押し紙、積み紙が新聞社の違法行為になります。

ただ残念なことに、その違法行為であることを明確につかむことが、御指摘のとおり非常に難しいわけでございます。

そういう観点から、おっしゃいましたように、その実際の注文部数、実際に購読されている部数等を客観的に把握しようということで、販売管理センターというものを業界の中で地域ごとにつくるように指導したわけでございます。一部の地域ではそういうセンターができておりまして、ある程度機能しております。また、その他の地域では、販売管理センターという名の組織はできておりませんが、同様の機能が新聞業界の自主規制の組織である公正取引協議会の支部の組織の中につくられておりまして、ある程度機能しております。

ただ、目標とするところからは、遺憾ながら遠いといいますか、目標を達したとはまだ言えない状況だと思います。これについては、さらにこの面での自主規制を強化するように指導を続けておりますし、同時に公正取引委員会も、公取の職員、地方にもございますけれども、それを使いまして、特に問題の大きい、販売競争の激しい押し紙、積み紙等がしばしば行われるような地域につきましては、公正取引委員会の職員みずからがパトロールをして違反行為の摘発に努めるというような方法を講じております。

[193]
公明党 草川昭三
公正取引委員会の非常に数の少ない担当者の方々が、各地域で大変苦労をなさってみえることは、私は多とするものです。地方では、公取の方々というのは本当に数が少ないわけですからね。また、このほかにいろいろな訴え、さまざまなものが出てきておるわけでございますから、新聞販売のことだけにかかわり合っていられないという苦しさはよくわかりますけれども、これはひとつもっと厳重に指導していただきたいと思うのです。

私のところへたまたま山陽道の販売店の方の手紙、これは読むといいのでございますけれども切切たる手紙でございます。例えば「増減管理センターは、販売店がここを通じて発行本社へ注文することになっていましたが、店においては」、店というのは販売店ですが、「その発行の増減管理センターの電話番号さえ知らされず、新聞社がすべて」――親元ですよ、「親会社がすべて報告し、信託銀行の金庫に保管されている書類は各社立ち会いのもとに初めて閲覧が可能であります。」こういうことなんですね。それで、信託銀行の金庫に保管されている資料というのは、いわゆる管理センターの実際の増減の数の問題だと思いますね。

私は、この際これは公表を――この数はABCとしての報告があるわけでございますが、増減管理センターの数字というのは、各社が立ち会いでなければいけないとか、そうではなくて、きちっと行政指導で、毎月の増減管理はそれぞれ地区において発表しなさい。そうすると手の内は全部わかってしまうわけですから、スポンサーも安心するわけですよ。

私どももいろいろなスポンサーの方とお話をすると、それぞれ実際に地域での影響力をみんな知っていますから、それで契約をしておるわけです。だから私は、新聞店いじめみたいな形でやられるようなABCレポートだとか管理センターのあり方というのは問題があるような気がしてなりません。公取は、この管理センターなりあるいは地区の委員会に、複数で業務に従事をしろとかいろいろなことを言っておみえになりますけれども、この事務局長の身分というのは協会の身分でございますが、複数でやれと言われる事務員の方々は、その地域のところで持たなければいけないというので、雇用主が違うというようなこともございまして、問題が非常にふくそうをいたしております。

そこで、余り長くなっても問題がございますが、1つは管理センターの数字の公表化を図るということについてどのようなお考えか、お伺いをしたいと思います。

[194]
政府委員(公正取引委員会取引部長) 利部脩二
現在まで、公表化のところまでは私どもの方も検討したことはございませんが、その前に、少なくとも各販売店の実際の部数等を正確に把握できるように、その関係の帳簿、書類を必ず備えつけるとか、それから公正取引委員会ないしは公正取引協議会等の自主検査の場合に、抜き打ちで検査しても資料が得られるとか、そういう仕組みをまず考えてみたい、まずそれを徹底させたいと考えております。

[195]
公明党 草川昭三
それはそれでぜひやってもらって結構ですが、今でも、この協議会の方もパトロールをやろうということでやっておみえになるわけですよ。ところが、通知があるのが、あしたやりますよ、こういうことらしいのですね。それで翌日行かれる。その間に本社の方から販売局の方々が来て、こうだからひとつこうしろと言って、もう何か名簿ができておるのだそうですね。これを見せろということなんです。ところが、経理上はやりくりが大変ですから、複式の簿記をやっているところでは、そんなこと言われたってやれっこないわけです。ということになると、押し紙というのですか、その差のある分だけはもう1軒出張所を設ける、いわゆる下請ですね。その出張所分ですよという統計の数字を発表するんだそうです。ですから、抜き打ち検査に来た方は、実際売っておる部数と実際押し紙を受けておる差は、出張店の数字を見せられるということで、おたくの社はえらい出張店扱いが多いんですねなんという話が、私調べてみると現実にあるわけです。しかし、その人が本当に下請というのですか、出張店なのかどうかをフォローアップするという努力は、残念ながらできないわけでございまして、そこら辺の問題をいま一歩踏み込んでやっていただきませんと問題があると私は思うのです。

この増紙の問題については、さる有名な大新聞でございますけれども、大阪において物すごい水増しの申請を、その会社挙げて中央本社に報告をした。それがばれて、その会社の場合は重役が責任をとられたというような深刻な押し込み競争が、実は新聞界には行われるわけであります。こういうことについて、どうでしょう、せっかくABC協会がこういうことをやっておみえになりますが、承知をしておるのかどうか。

同時にまた、昨日この新聞の方の協会の方々で、販売正常化に対するいろいろな要求なり勉強会というんですか、理事会をやっておみえになるようでございます。そういうようなことで発行本社との販売適正化についての議論があったやに聞いておるわけでございますが、どのように承知をされておるのか、お伺いをしたいと思います。

[196]
説明員(通商産業省産業政策局サービス産業官) 菅野利徳
先生御指摘の前者の点でございますけれども、従来通産省におきましては、販売担当者がいろいろ更迭等の問題があったというようなことについて承知してはおりませんでした。

後段の点でございますけれども、昨日日本新聞販売協会の方におきまして理事会が開かれたということで、販売正常化の問題についてもいろいろ議論がなされたというようなことにつきましては報告を受けております。



[201]
公明党 草川昭三
まとめの答弁もまたいただきたいわけでございますけれども、結局今のままの過当競争が続き、そして押し紙等はなくする――公正取引委員会は2%でございましたか、3%でございましたか、押し紙はもうこれ以上はだめだと言っておるのですが、私が聞いたところでは今なお10%を超し、そして地方のローカル新聞に行けば行くほど15%ぐらいの押し紙がある、こういうわけであります。その分だけは店主が、どっちにしても払わなければいかぬわけですね。ということになりますと、労働条件は下がる、それからアルバイトも非常に劣悪な条件になる、基準局からはもう重点的に指導しなければいけない。間に入るのはいわゆる販売店の店主になるわけであります。

私のところへ来た手紙も、なお末筆に、勝手ながら文中で用いました地区名等より当店の名前が万一新聞社に漏れると、改廃を含めてどのような処置があるかもわかりません、この点を御理解の上、店名の見当がつかないよう特別の配慮をお願いするという、今どき日本でこんな手紙が来るなんというのは、よほど劣悪な労働条件のような気がしてなりません。日本の国でこんな手紙が来るようなところはないと思う。しかもそれが新聞という、日本の報道機関という、それこそ日本の、文化国家の一番のところでこういう手紙が来るわけですから、一体どうなっておるのかということを私は最後に指摘をせざるを得ません。

そういう意味で、私もこれは今後非常に長期間かかると思いますけれども、本気でやれば親会社ももうかるわけですよ。先行投資ができるわけです。1つのたらいの中の綱引きをやっているだけですから、ちり紙だってタオルだって、そんなに皆さん欲しいわけじゃないわけですよ。そんなものは、なければないで済むわけです。だったら、新聞業も安定し、販売店も安定すると思います。

そういう意味で、長官、ぜひ国民生活の立場からもこの問題は真剣に考えてもらいたいと思うのです。私が今申し上げたことについて、ひとつ今度は経企庁として、国民生活を守る立場から感想を述べていただいてこの問題は終わりたい、こう思います。

[202]
経済企画庁長官 金子一平
先ほど来の御意見を交えてのお話を承りまして、やはり日本の報道機関中の雄たる新聞の経営のあり方について、真剣に見直さなければいかぬなと考えておるわけでございまして、今後私どもも、直接介入するわけにはまいりませんけれども、そういう方向でぜひひとつ進めるように努力してまいりたいと考えております。