平成29年03月30日 衆議院 消費者問題に関する特別委員会

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日本共産党 清水忠史
日本共産党の清水忠史でございます。

早速資料の1を見ていただきたいんですけれども、ことし1月に発行された消費者法ニュースに、新聞残紙問題、いわゆる押し紙問題の特集が組まれ、弁護士などが寄稿しておりまして、きょうはこの問題について取り上げたいと思うんです。

松本大臣、突然なんですけれども、松本大臣自身は新聞配達のアルバイトの経験はございますか。

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国家公安委員会委員長・内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全・防災) 松本純
新聞配達のアルバイトはありません。

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日本共産党 清水忠史
実は、私は中学のときからずっと配達しておりまして、大学受験に失敗して予備校時代には、毎日新聞の販売所に1年間住み込みをいたしました。配達、集金、折り込み作業というのが本当に大変でして、将来こんな仕事は大変だな、やりたくないなと思っていたんですけれども、共産党に入ったら赤旗の配達、集金をやらされまして、何の因果か、本当に大変だなと思っております。

それだけに、何げなく日々新聞が届いているんですけれども、我々の手元に届くまでは、新聞本社はもちろん、それから記者の皆さんの努力、さらには配送だとか印刷だとか皆さんの努力があると思います。何といっても、やはり販売所と配達員の毎日の努力があってこそ、私たちがそうした新聞を手にとることができるというふうに思うんですね。

それで、新聞残紙、押し紙というものは、新聞本社から供給されている新聞のうち、販売店から個別の読者に配られることのない、読者のいない新聞のことでありまして、これはほとんどがごみとして捨てられます、古紙回収業として。また、販売店の営業を圧迫しているというふうに言われております。

最初に公正取引委員会の方に伺うんですが、一般的に、新聞本社が販売店に対して注文部数を大幅に超える新聞を発送していること、この押し紙行為が判明した場合にはどのような対処をされておられるでしょうか。

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政府参考人(公正取引委員会事務総局審査局長) 山本佐和子
お答え申し上げます。

独占禁止法におきましては、禁止する行為といたしまして、不公正な取引方法というものがございます。新聞業につきましては、新聞業における特定の不公正な取引方法、新聞特殊指定というふうに申しております。これにおきまして、発行業者が、販売業者に対し、正当かつ合理的な理由がないのに、販売業者が注文した部数を超えて新聞を供給すること、または、販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給すること、これによりまして販売業者に不利益を与えることを不公正な取引方法として規定しておりまして、このような行為は独占禁止法で禁止されているということでございます。

公正取引委員会といたしましては、このような行為が行われている場合には、独占禁止法に基づきまして厳正に対処をしてまいりたいと考えておるところでございます。

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日本共産党 清水忠史
昨年3月24日に、公正取引委員会は朝日新聞社に対して、独占禁止法違反につながるおそれがあるとして、違法行為の未然防止を図るという観点から注意を行っております。しかし、その後もいわゆる押し紙問題は解決しておりませんし、これはほかの新聞社に対しても言えることだと思うんです。

資料の2をごらんください。ちょうどきのうなんです、これ。ちょうどきのう、佐賀新聞押し紙訴訟というもので判決が出ました。その弁護団の声明をきょう皆さんに、弁護団の皆さんの了解を得てお配りさせていただいております。

この事件は、ある販売店が、押し紙の仕入れ代金の増加に苦しめられておりまして、昨年4月に、弁護士を通じて、新聞社に対して減らしてほしいという減紙の申し入れを行ったわけです。ところが、佐賀新聞社は、減紙の申し入れに応じないばかりか、押し紙の仕入れ代金700万円を払えと請求してきた。それだけではありません。この販売店との契約を一方的に解除するという通告をしたということなんですね。そのために、弁護団が契約更新拒絶の無効を求める仮処分の申請を行い、それが認められたという声明なんですね。

それで、本当にこれはリアルなんですけれども、資料の3、皆さんにお配りしている4枚目をごらんいただきたいというふうに思います。

これは、販売店の注文部数と佐賀新聞社が供給した部数の生数字です。これも了解を得て、きょう皆さんにお示しさせていただいております。

平成28年、2016年4月、販売店の注文部数が2550部であったのに対し、佐賀新聞社は、430部も多い2980部を毎日供給していたわけであります。ずっと続きまして、ことしの2月にも、2520部で注文しているにもかかわらず、2959部、439部多い、これは1~2割ぐらいですからね、そういう新聞を供給している。これはまさしく、先ほど公正取引委員会の方からも答弁ありましたけれども、独占禁止法に違反する行為だと言えるのではないでしょうか。

それで、資料の2枚目、3枚目にもつけましたけれども、この声明文にもありますように、やはり、販売店を苦境に追い込む押し紙というのは、佐賀新聞社のことだけじゃないんです。ほかの新聞にもあるんです。

実は私調べました。直接伺った朝日新聞の販売店、特定しません、読者数が約2000なんですね。それに対して予備紙が700部でした、700部。読者がいない新聞が3割以上ごみになっているんです、毎日。

さらに言いますと、読売の販売店では、管理能力を超えた残紙のせいで新聞こん包が入り乱れる。つまり、1200とか1300とか1400とかの残紙があると、もう一々販売所の中に入れないで出しっ放しにするんですよ。そこに古紙回収業者が来て積んでいくのですけれども、古紙回収業者も最近もうかりまして、夫婦2人でやっていたのを従業員を雇うようになったんですよ。そうしたら、従業員は1週間に1回休まさなあかんでしょう。休みの日にとりに来なくて、そこへ次の日に読売新聞の翌日の朝刊がどさっとおりて、混在して、前の日の新聞を読者に届けるという事件も起こっております。

毎日新聞も結構ひどいんですね。大阪地裁では今2件の訴訟、いわゆる本社と販売店の訴訟が係争中であります。

結局、300も400も500もある新聞というのはごみになりますから、ちょっとでもお金を払ってくれるんやったら配達した方がいいんですよ。ですから、これは原価割れ、まさしく再販を崩して、新聞の定価を独自に決めて、例えばスポーツ新聞に本紙をつける。昔は毎日新聞に土日スポーツニッポンをつけていたんですけれども、今は逆で、スポーツニッポンに毎日新聞の本紙をつけるというようなこともやっておりまして、まさしく読者間の負担の公平性という観点から、これは消費者問題にもつながるというふうに私は思っております。

それで、なぜこのようなことが放置されているのか。実は、これは1982年3月8日に、我が党、共産党の議員が初めてこれを取り上げたんですね。瀬崎衆議院議員でありました。35年たってもいまだにこのような状況が残されているというのは大問題だと思います。

そんなんやったら、要らぬと言うたらええやん、切ってくれと言ったらいいんじゃないの、販売店はと思われるかもわかりませんが、実は、新聞本社が優越的な立場を利用して販売店が告発させないという仕組みができ上がっているんですよ。

例えば、販売店の方が公正取引委員会に告発するとか、あるいは弁護士とか政治家に何とかしてくれとお願いしているのが知れると、もうとんでもない嫌がらせや仕打ちを受けると。例えば改廃というのがあります、強制改廃。先ほどの佐賀新聞の例ではありませんけれども、一方的に契約を解除する、そして、そこの販売店が持っていた読者を別の販売店に全部つけかえて廃業に追い込む、こういうことが行われるので物が言えないという状況があるんですね。

もう一つは、読者に配られていない新聞については補助金とか奨励金が出るんですよ、補助金、奨励金が、一部当たり幾らかというのが。ですから、新聞残紙、押し紙を減らすと自動的に補助金、奨励金も減るので販売店にとってはやはり減収になるという。

さらに、折り込み広告が持ち込まれますけれども、この折り込み広告というのは、いわゆる申請部数に基づいて基本的に持ち込まれますので、供給部数が減ると、スーパーやあるいはマンションのチラシなどが持ち込まれる、その折り込み部数も減るということでこれも減収になる。どっちにしてもジレンマに陥って、販売店の方々が余分な新聞を、大量の新聞を切ってくれというふうに言い出せないというような仕組みがあるということを、私はいろいろな方からお話を聞いてわかりました。

胸を痛めた話がありますので、紹介します。

この販売店では日本経済新聞社に対して毎月増減表を送付しているんですが、全くこれが改善されない。私は見せてもらいました、注文票とそして請求書。全くこれは反映されない。結局、この方は、立場が弱いですから、日本経済新聞社に対して仕入れ代金を納めるために泣く泣く600万円の借金を背負ったと。この方はおっしゃいます、このままでは、日本の伝統文化である新聞宅配制度がもう崩壊しますよ、やっていられないですよと。これはやはり私は危機だというふうに思うんですね。

公正取引委員会にお伺いするんですけれども、こうした販売店の方々が公正取引委員会に通報した場合、具体的にどう対応してくれるのかということですよ。個別の例はいいですよ。一般的な話なんです。

というのは、どの方に聞いても、公取は当てにならぬと言うんですよ。それは人によるかもしれませんよ。潰されるかもわからない、不利益を受けるかもしれないという決死の思いで通報しているにもかかわらず、それに応じた対処をしてもらえていないという声を私はたくさん聞きましたので、具体的にどのように対応していただけるのか、今のお話を聞いていただいて、そして、販売店の情報はしっかり守られるのか、この辺いかがか、お答え願えますでしょうか。

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政府参考人(公正取引委員会事務総局審査局長) 山本佐和子
お答え申し上げます。

公正取引委員会におきましては、独占禁止法に違反すると思料される事実について申告を受ける場合には、電話、書面、こういったものだけではありませんで、必要に応じまして、申告をしたいという方々と面談をするなどによりまして、丁寧にお話を聞くこととしておるところでございます。

また、例えば、申告される方が不公正な取引方法により被害を受けている、このような事業者の方の場合には、やはり、公正取引委員会に申告を行った事実が外に漏れてしまいますと、そのことによりまして立場の強い取引先から取引を切られてしまう、こういった懸念を抱いていることは大変多いというふうに私ども認識をしております。

このため、事業者の方々が安心して公正取引委員会に情報を寄せていただけますように、申告いただいた場合には、その事実が外部に漏れることのないよう万全の管理はしているところでございます。

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日本共産党 清水忠史
ぜひそうした対応をしていただきたいと思うんです。販売店の皆さん、今の答弁を聞いていらっしゃると思います。

それで、公正取引委員会さんには、この間、私の事務所を通じて、さまざまな、押し紙や残紙の実態を告発する資料についてお渡しもさせていただいております。ぜひこれを分析してほしいんですけれども、相談があれば対応するという受け身ではなくて、本当に、本社とか販売店に抜き打ちの調査とか実態調査、こういうものをやっていただくということが私は効果的ではないかというふうに思いますので、これも販売店の皆さんの思いですから、しっかり反映させていただきたいということを要望しておきたいと思います。

大臣、ほかにも、販売店が苦しむというだけじゃなくて、この残紙の問題、押し紙の問題にはさまざまな実は弊害があります。

例えば、ごみになるということですね。読まれないんですよ。大量の古紙ができるわけで、ある販売店の方は、販売所におろさないで、もうそのまま持って帰ってくれ、そのまま古紙回収業者に搬入してくれ、その方が手間が省けるというふうな話まであるんですね。これは、やはり再生紙に利用するよりも押し紙をなくした方が、CO2排出などの環境にもいい影響を与えるというふうに思います。

それから、先ほど申し上げました、新聞に入る折り込み広告です。これは、実際の読者数を超えて持ち込まれているということであれば不当な取引ですよ。不利益をこうむるわけですよ。ですから、ここも大問題だということ。

それから、これも大事な問題なんですけれども、新聞折り込みには政府が発行する広報もございます。この間、私の事務所でこれを調べたんですけれども、政府広告には、内閣府が発行しているもののほかに、各省庁独自に折り込みを広告代理店の方に委託をして行っております。ただ、私、いろいろ、ABC協会とかも調べたんですけれども、実際の読者数なのかあるいは販売店に供給している部数なのか、これは定かでないんですよね、政府広告であるにもかかわらずですよ。

つまり、これがもし残紙の分も含んで折り込みチラシが印刷されて販売店に供給されているとすれば、読者に届かない政府広報が印刷されているということになるわけで、これは国民の税金が無駄に使われているということにもつながりかねない問題だというふうに私は思っております。

大臣にお伺いします。

国民生活センターの資料によりますと、新聞勧誘トラブル、これが2006年から2016年の間で10万8000件確認されているということなんですね。とりわけ、この間は、高齢者の皆さんに対する新聞勧誘のトラブルというのが非常にふえていまして、第1位なんですよ。第2位は屋根工事なんですけれども、屋根工事の相談の10倍が新聞勧誘トラブルなんですね。

もちろん、高齢者ですから、認知症の方もおられるでしょうし、結局、何でこんなことになっているのかというと、大量に販売所に届けられる、ごみと化す、これを少しでも読者に結びつけたいという意識がこうした強引な勧誘に結びついているとすれば、これはやはり新聞残紙問題が消費者問題、消費者トラブルの要因の一つだと私は考えられると思うんですね。

ぜひ、大臣、この議論を聞いていただいて、押し紙かどうかの定義は新聞本社や販売所によって違うんです、実は。

新聞社は、我々は押し紙はやっていない、注文部数をちゃんと供給していると。

しかし、販売店の方はそうじゃないと。

定義はいろいろありますが、日本の全国に、訴訟のお話もしましたけれども、配られない大量の新聞があるということ、そして、これが新聞勧誘トラブルの一つの要因にもなりかねないということについては、きょうの私の質疑を聞いて少しは認識を持っていただけたのではないでしょうか。いかがでしょうか。

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国家公安委員会委員長・内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全・防災) 松本純
消費者庁といたしましては、どのような背景にあるかにかかわらず、また商品やサービスの種類を問わず、事業者の強引な勧誘による消費者被害が発生している場合には、法に違反する事実があれば、所管法令に基づいて厳正な対応を行うことが重要と認識をしております。

また、悪質な事業者による消費者被害に対応するためには、法執行の強化、また相談体制等の強化充実、消費者教育の推進等を行うことが重要と認識をしております。

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日本共産党 清水忠史
直接、残紙の問題については触れていらっしゃらないんですけれども、私の質疑を聞いていただいて、その一つの要因になっているということについては理解していただけたというふうに思います。

やはり拡張員の方も、500部も1000部も押し紙があったら、1部、2部ふえてもうれしくないと言うんですよ。私は、我が国の組織ジャーナリズムを健全にしていくためには、やはり1社だけじゃなくて新聞業界全体でこの残紙、押し紙の制度を解消していくべきだというふうに思っています。フリーのジャーナリストの皆さんも活躍されているんですが、やはり何が正しいかというときに、組織ジャーナリズムの重要性というのは絶対必要ですよ。日本の場合は宅配率がずば抜けていますでしょう。駅売りというのも一部じゃないですか。よその国と比べたら、宅配率はすごいんですよ。これが、言論の自由を守り、平和で豊かな暮らしを求める国民に正確で必要な情報を与えるジャーナリズムの役割。

インターネットが普及していますけれども、僕は、紙媒体、新聞というのはこれからもずっと残していくべきだし、残っていくべきものだと思っています。昼夜を分かたず配達、集金に苦労されている販売所やあるいは配達員の方々の御苦労をしっかりと受けとめていくというのが、私たち政治家の役割ではないのかなというふうに思っております。声なき声にしっかり応えていくということが大事だと思っております。

誇りを持ってこの仕事に取り組んでおられる販売所の皆さん、配達員の皆さん、この汗と苦労と涙にしっかりと応えていくために、本委員会の皆様方にも、この新聞残紙問題、押し紙問題についてぜひ御理解とそして認識を持っていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

ありがとうございました。