昭和57年03月08日 衆議院 予算委員会第四分科会

[292]
日本共産党 瀬崎博義
昨年の3月2日の分科会でも私は質問しておりますが、当時の河村取引課長は、実態調査結果の総体的なまとめとして、「全般的に申しまして、かなりこういった拡材、無代紙の提供行為が行われておるという実態でございました。」と断言しておるわけですね。

発行本社にもいろいろ申し入れをしているということなんですが、この公取が公式に存在を認めたかなりの拡材、無代紙の提供行為の原因は、新聞販売店自身に原因があると考えているのか、発行本社側に原因があると考えているのか。

別の言葉で言えば、販売店に責任があると考えているのか、発行本社に責任があると考えているのか、どっちですか。

[293]
説明員(公正取引委員会事務局取引部取引課長) 植木邦之
どちらの責任かということでございますけれども、通常の場合、私どもの方は、発行本社の方が自分の紙数を拡大するために景品を出していらっしゃるのじゃないかというような受けとめ方をしておるわけでございます。

[294]
日本共産党 瀬崎博義
ところが、あなたのところの相場取引部長は、ことしの2月12日新橋の航空会館で開かれた日販協の全国代表者会議でこういう発言をしたというのです。「これまで発行本社の話をいろいろ聞いてきたし、調査も行ってきたが、本日改めて」改めてですよ、「新聞販売の実情を知った。しかし一様に不正常販売の起因するところは本社側の部数競争によるもので本社をきびしく取り締まってほしいというが、違反行為を行っているのは販売店であり同罪だ。」「本社の取り締まりもさることながら景品を使ってるのは店側で、この違反を放って置けなくなる。直接の違反行為をしているのは店で、本社だというならその動かぬ証拠を提出してほしい。」こんなことを言っているのですね。

発行本社と販売店は同罪だと言わんばかり。少なくとも同列に置いている。違反を取り締まるとするならむしろこの販売店をやらなければいかぬとさえ言っているわけでしょう。あなたのいまの答弁とは全然違うのですね。こういう態度で公取が臨んでいるとしたら事態は改まらないと思うのですが、こういう部長の発言の責任をどうします。

[295]
説明員(公正取引委員会事務局取引部取引課長) 植木邦之
先生の御指摘の点でございますけれども、私どもの相場取引部長が新聞販売店と発行本社は同罪だという発言をしたということなんでございますけれども、私その場に直接いたわけではございませんが、取引部長の発言しました趣旨は、発行本社とそれから販売店とが同罪、同罪という言葉を使ったかどうか、使ってなかったというように解しておりますけれども、同罪ということではありませんで、むしろ発行本社が出すということにつきまして、販売店もそれに同調して同じようなことをやると違反行為というものはおさまらない、むしろ販売店の方も、力を入れてそういうようなことをやらないように話し合ってやっていっていただきたいというような趣旨を発言したんだろうと理解しております。

[296]
日本共産党 瀬崎博義
実は、この相場部長が、違反行為をしているのが本社だと言うんならその動かぬ証拠を出してほしい、こう言ったのですね。その動かぬ証拠を全面的に提出した人があるわけですね。

これは昨年の10月19日でありましたが、奈良市で読売の鶴舞販売店の営業をしておった方、この方は約10年間読売の販売店をやっていらっしゃった北田さんでありますが、残念ながら発行本社からの圧力を受け、読売の指示によって営業権を譲渡し、廃業に追い込まれたわけであります。

この方の提出した資料というのは間接的なものではなくて、発行本社と販売店つまり自分との直接取引の実態を示す資料を全面的に提供されたわけでしょう。

すでに半年を経過しているわけでありますが、この調査結果はどういうことになりましたか。

[297]
説明員(公正取引委員会事務局取引部取引課長) 植木邦之
いま先生御指摘の北田販売店さんのことでございますけれども、私どもは、申告がありましたものですから、まずそういう資料がどういう内容を持っているのかというのを調査いたしまして、それから新聞発行本社、この場合は大阪読売新聞社でございますけれども、これにつきまして、その取引状態がどうなっているかということを現在鋭意審査している状態でございます。

[298]
日本共産党 瀬崎博義
一体いつ結論が出るのですか。

[299]
説明員(公正取引委員会事務局取引部取引課長) 植木邦之
私どもが現在鋭意審査しておりまして、いろいろな事実を詰めていきたいと思っておりますので、あとしばらく時間をおかし願いたいと思います。

[300]
日本共産党 瀬崎博義
北田さんが提供されたときに私も同行しておりました。呼び出しを受ければ東京へでも出てくるともおっしゃっておりました。確かに電話での連絡は倒産されておってつきませんが、手紙を出せば喜んで来られるという立場にある。ところが、聞けば、きょう初めて公取委から正式に事情聴取に出ていったということじゃありませんか。まさに、きょうこの質問があるから、かっこうつけるために行っておる、こうとしか思えないような態度なんですね。それは手が足りないというなら率直にそう言えばいいけれども、しかし、あれだけの資料が出されて、6カ月たってこの事態、これは怠慢と言われても仕方がないと思うのです。

北田さんが提供した資料というのは、ただいま大臣にお見せしたその資料の3枚目以下をごらんいただいたらいいのですが、先ほど言いましたように、まさに直接、取引の実態を示す資料なんですよ。それはごく一部であります。

若干御紹介しますと、③というのが、いわゆる売れない新聞を押しつけてきている実態であります。本社送り部数は本社のコンピューターで打ち出された内訳書の新聞代請求額明細より拾ってあります。それから実配数は北田販売店の読者一覧表から集計をしたものであります。これで見てわかりますように、51年の1月、本社送り部数791、実際の配っている部数556、残紙235、残紙率29.7%、52年1月送り部数910にふえます。実配数629、残紙数281、残紙率30.9%に上がります。53年1月本社送り部数1030、実配数614、残紙416、残紙率は40.4%になります。54年1月送り部数1095、実配数680、残紙415、残紙率37.9%、途中ちょっと飛ばしますが、55年6月送り部数1100、実配数675、残紙425、残紙率38.6%、平均して大体3割から4割残っていくわけなんです。

そういう状態がずっと続いたものですから、このままではとうてい成り立たないというので北田さんは55年の6月、本社の送り部数を実情に合わせて減らしてほしい、こういう交渉を始めたわけです。確かに減らしてくれたのです。

55年7月には送り部数が720になりました。この時点では実配数676で残紙は44部、わずかに6.1%、この程度ならあるいは常識と言えるかもしれません。ところがすぐまた送り部数がふえてきて、56年の1月には770送ってくる。56年5月には815送ってくる。結局残紙の方も大体200近くなって、残紙率が20%になる。

しかも、こういうふうに送り部数を減らしたということで、先ほど言ったように読売本社から圧力をかけられて廃業に追い込まれた、こういうふうな状況なんです。

こういう残紙のすさまじさは、去年も、大阪豊中市の樋口販売店、これは日経でしたが、そこの残紙状況で説明した。つまり残紙回収業者というものがりっぱな企業として成り立っておるという実態。そのときの残紙商がウエダという会社でした。北田さんの場合もまたウエダが回収に回っておるのです。

④はそのウエダの残紙回収の伝票であります。ごらんください。ものすごいものですね。55年の上半期分だけちょっととってみますと1万8000キロ、1カ月平均3000キロの回収なんです。当時はわりと故紙の高いときだった。10キロ300円前後で、この残紙によって1月9万円の収入が上がっておるのですよ。部数に直しますと450部前後になります。450部といいますと、新聞原価に直しますと当時セットで1290円でしたから、その450部分58万500円になるのです。すなわち新聞社には58万円を納め、しかし実際には売れないものだから残紙商に売ってしまって、ここで約9万円を回収する。差し引き50万近い損になるのですよ、1月につき。

月の販売が700部前後の販売店でこんなことが一体成り立つだろうか。

特に、これは通産大臣の直接所管になることなんですが、相当な予算を組んで省資源、省エネルギーの政策を進めていらっしゃるのでしょう。果たしてこういう事態をそういう省資源の面からも放置しておいていいのだろうか。送られてきたものが、ビニールの包装も解かないでそのまま残紙商にいく。その売り上げだけで、月9万円。大臣、いかがでしょう、こういう点について。これは通産省として去年も何とかしなければならないという話はあったが、具体的に手を打ってない。どうされますか。

[301]
政府委員(通商産業大臣官房審議官) 植田守昭
本件につきましては昨年も御質問をいただいたわけでございますが、その後、昨年の9月でございましたか、要請も関係者の方から受けまして、私どもといたしましてはその後9月18日に、社団法人日本新聞協会、これは文部省の所管でございますが、この協会の責任者を呼びまして陳情の趣旨、要請の趣旨を伝えまして、今後こういった問題につきましては、要望が、私どもの商務・サービス室でございますが、商務・サービス室に出された場合にはこれを新聞協会に伝えていくということを先方にも伝えまして、了承を得たわけでございます。

いま公取の方ではいろいろ公取という立場からお調べいただいているようでございますが、私どもといたしましては、なかなか新聞に対する行政指導は率直に申しましてむずかしい点があるわけでございますが、そういったようなルートを通じましてこの問題を先方にも伝えていくということをやってきているわけでございます。